Doors by Yusuke Yamatani
日本人写真家、山谷佑介による作品集。
本書は山谷による、写真撮影とドラムパフォーマンスを融合したセルフポートレート作品『Doors』のヨーロッパツアーのドキュメントを中心に、パフォーマンスから出発したこの写真表現に対する一つの答えとして制作された。当初はヨーロッパツアーを実現するためのクラウドファンディングへの返礼品として181部限定で制作されたが、新型コロナウィルス感染症の拡大や世界の分断の加速を受け、「自由に車でヨーロッパを移動し、様々な場所で半裸の東洋人がパフォーマンスを繰り広げた、この一種ロードムービー、そしてドキュメンタリー的な写真集をより多くの人々に見てもらい、懐かしさを伴う過去や、来たるべき未来に対して思いを巡らせてもらいたい」という思いから、支援者たちの許可を得た上で、表紙を変更して一般発売されることとなった。
パフォーマンスでは、山谷が叩くドラムセットの周囲に複数台のカメラが用意され、ドラムを叩いた振動をセンサーが感知すると、強烈なストロボ光を放って山谷自身が写し出される。撮影された写真はパソコンを経由して、複数台のプリンターから絶えずプリントアウトされる。ドラムを激しく叩き続けることで自分自身をトランス状態へと誘発させ、カメラと観客を前にして意識と無意識が邂逅したセルフポートレートが撮影され、同時に、自動で回転を続けるカメラには山谷に眼差しを向ける観客や会場の様子が写し出されている。
山谷は2019年9月に、このパフォーマンスを行うヨーロッパ6カ国、1ヶ月間のツアーを敢行。走行距離4,980km、全8回のパフォーマンスで採集された山谷の数は3,563カットに及んだ。写真集にはパフォーマンスで撮影された写真に加え、都市から都市を移動する道中で切り取ったスナップショット、風景、 食事、ホテル、出会った人々の姿が淡々と配置されている。また、開催を告知するフライヤーや現地から書いた絵葉書、 ドラムを叩いた痕跡を記録したフォトグラムや、帰国後に現地の人々から届いた写真なども、この写真集を構成する重要な要素となっている。巻中には山谷自身による2万字のインタビューも掲載されており、約2年間に渡り写真家自身が手探りで世界に身を挺していった中で見えてきた現在の写真観をまとめた渾身の一作へと仕上がった。
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Title: Doors
Artist: Yusuke Yamatani
Gallery Yamatani, 2020
Softcover with booklet, text in English and Japanese
297 x 210 mm, 400 pages
¥10,000 + tax